久坂部羊『廃用身』

乙武洋匡氏に対する類を見ないDisをみた。
あらすじをざっぱに話すと、
病気事故その他の理由で体の一部がもう動かない人たちがいる。うごかないよう苦しいよう、で済んでいればそれでいいのだけれど、それ以上の副次的被害がでてめっぽう困る。ヘルパーさんに運んでもらうときに、自分の意思では動かない手足が勝手に動いて迷惑、その他の感触は何一つないくせに痛みだけは伝えてきて困る。そこで漆原糾は考える。「動かない上に迷惑をかける手足だったら切断してなにも問題ねえんじゃねぇの? つうか切断するのがむしろ患者のためじゃねぇの!?」
名づけてA(Amputation)ケア。行け、スーパードクター漆原糾! 今日も患者の体を切断だ!

てなもんなんですが、そこで彼がAケアをフォローするための材料として乙武洋匡氏をモチーフにしたとしか思えないキャラの話を持ち出すわけです。曰く、「乙武洋匡氏(風)が明るく聡明なのは先天的な四肢不全により、脳に行く血流が一般のひとより多いからだ=みんなも体を切れば彼みたいに明るく聡明になれるよ」。
えらい論理もあったものですが、それはともかく。

乙武氏の長所を! 肉体的問題で片付けた!

「君がみんなに優しいのは君の生活が豊かだからだよ」とは僕の仮想敵の言葉ですが、これほど強烈且つ反論を許さないDisり方があるでしょうか。しかも恐ろしいことにこのエピソードは話のツマなんですよ! メインテーマじゃないんですよ! 人をDisっておいてそのことに対して意義がないんですよ!

著者の本名の中に比類なき悪意を示すsixが含まれていても僕は何も驚きませんね。
関係ないですが著者の次作である『破裂』はスーパーいまいちであったことを付記してこの話を終わります。微妙にもほどがある、とは誰の言葉だったか……。