およめさん問題

「俺は結婚式などしたくありません」
「僕もしたくない」
「親戚縁者を集めて恥の品評会。そんなもの誰がやりたいか!」
「か!」
「ですが、ここで矛盾が生じます。仮に『結婚式なんてやりたくないぜ』派のA嬢、『結婚式やりたいぜ』派のB嬢がいたとします」
「ふむ」
「A嬢の主張はこう。『私は結婚式なんてのは無駄なシステムだと思うわ。そんなものやりたがる奴の気が知れないわね。戸籍だけ入れましょ、税金も安くなるし』。彼女はメンソールタバコをふかしながら言いました」
「はい」
「B嬢の主張はこう。『わたし山田くんと、結婚式、したいな。お父さんにウェディングドレス見せてあげたいしさ』。彼女は少し照れながら言いました」
「ほう」
「と、こういう意見が出揃ったときに俺たちが結婚相手として選びたいのはどちらか。悩むまでもありませんね選択肢はありませんね一択ですね、そうです俺たちはB嬢のほうに強い愛情を感じるのです」
「はあ」
「この矛盾! パラドクス! B嬢と結婚するためには式を執り行わなければならず、式無しで結婚するとA嬢しか選べない! 酷い! おかしい! 残酷! 世の中ゲームバランス取れすぎだ! 現行政治打倒! シュプレヒコール! と、俺は悲嘆に暮れるのです。およよ」


「……こういうのも定番になってるからそろそろ言いたくないんだけれども君が忘れてるようだから言っておくよ。あのさ」
「判ったから言わないでお願い」
「……判った」