エーリッヒ・ケストナー『飛ぶ教室』・フィリップ・K・ディック『流れよ我が涙、と警官は言った』・グレッグ・イーガン『宇宙消失』
エーリッヒ・ケストナー『飛ぶ教室』B
タイトルからファンタジーなストーリーを想像していたのだが、ぜんぜんファンタジーじゃなかった。現実の話だった。
「はしごから飛び降りたとき、彼はそれ以前より勇敢だったわけではない。彼は絶望に駆り立てられて飛び降りたのだ」
「それは勿論良いことではありません。でも、こうしなかった場合、もっとひどいことになったことも考えられるのです」
どんなに下手糞な飛び方でも飛ばないよりは飛んだほうがよいらしく、辛い。
フィリップ・K・ディック『流れよ我が涙、と警官は言った』B
仕掛けのアウトラインをなぞれば実に単純な話なのだが、それにSF味をばらまくと結構読めるようになる。でもそれだけで長編は辛い。
グレッグ・イーガン『宇宙消失』A−
グレッグイーガンなりの量子論小説。仕組みとしては短編集『しあわせの理由』収録の『移送夢』に近い。あるいは『祈りの海』の『無限の暗殺者』。
僕は多世界に存在していて、このミッションを成功する僕と成功しない僕がいて、その僕の集合であるところの大きな僕がどれかの僕を現実に収縮させてうんたらかんたーら。
確かに面白いと思うのだけれど、こういったネタを短編に贅沢に使ってしまうところが僕の過去感じた氏の旨み、偉さだったのでちょっとしょんぼりした。
とにかく、図書館だ。図書館に行くんだ。たとえ『ハイペリオン』シリーズがラストの『エンデュミオンの覚醒』しかない変な図書館だったとしても。図書館に行け。行くんだ俺。