「俺、霊感があるんだ」「へえ(半笑い)」

「霊感がある・ない」という言説が世に広まっているのは大変に愉快であり、なかでも「私には霊感がない」という台詞はとても愉快である──と言ったのは誰だったかというと私の友人だ。

「霊感というものがある」「ない」を飛び越し、「霊感があるのは前提、そして私にはそれがない」

「自分はムー大陸の子孫だ」という人の話は聞く価値があるが、「ムー大陸の子孫じゃない」という人の話は聞く価値がない。なぜなら、私だってムー大陸の子孫ではない。


前提が噛みあわなくては話は通じず、つまり「僕は可能な限り働きたくない」ということがどうも今日の面接官には通じておらず、「週三日じゃ6万円ぐらいにしかならないよ」という台詞を生み出し、「それだけもらえれば十分じゃん!」という僕の心の叫びを生み出すのだ。しまいには「副業もあるんでね……」とか僕はいつのまにか口走り、「(月曜日の深夜に伊集院のラジオがあるから火曜日は働きたくないから)火曜日にその、副業がね……」とか言い出す。「副業ってなんなの?」と聴かれたら「小説ですよ。あまり売れてないんですけどね」とか頭を掻きながら照れる演技を始めそうだった僕を誰か止めてくれ。助けてくれ!