大変面白かったです。うは。
で、悪いところ。
序盤は大人のノスタルジィVS子供の現実、という扱いになっているのが中盤になるにつれ「子供化した大人」VS「大人びている子供」となっているのが惜しい。シーンとしての緊張感は「全力で向かってくる大人達」VS「無力な子供」の方が絶対的に怖いのに、しんのすけに代表される子供チームが『大人顔負け』のオーバーパワーを手に入れてしまっているため、緊張感が削がれる。あまりにも大人軍に力がないのでドキドキしない。大人軍にはマシンガンの一つでも使って欲しかったトコロ。弱者にはオロオロしてほしいのだ(まあ、それをやると「クレヨンしんちゃん」ではなくなってしまうのだが……)。幼稚園児チームメインから野原家チームメインに突如切り替わってしまう展開は見逃す(でも、ネネちゃんにはラストまでがんばってほしかったの)。

ラストのしんのすけ、彼の独白シーンはやや興ざめ。彼には達観者で居て欲しかったのですよ……。


良い点。
それ以外のほとんど全て。
大人から見捨てられてしまった子供たち、というのは恐ろしいまでの緊張感がある。飯を食うだけで一苦労。どうすれば生きることが出来るのかも判らない。恐怖の連続だ。コンビニのエピソードは小ギャグを挟むという意味も含めて中々イカス(というか、序盤、ギャグがなさすぎだ)。
「あの頃は良かった」という思想を持ってない人間は殆どいないと思う。
歴史的な意味での時代だけではなく、自らの『時代』。良かった時代が無かった人間は、よっぽど不幸な人間だ。そういいきってしまっても構わないだろう。
当作品では、「歴史的意味の時代」と「自らの時代」を混同している。それはデメリットであると同時に、大きなメリットでもある。
前者は「過去=昔』、後者は『過去=自らが幼かった時代』だ。昔の日本的状況、というのと若かった頃の自分、というのが混同されている。僕の趣味としては混同しないで作って欲しかったのだが、混同する価値も認められる。普遍性であり、共感性だ。恐らく、誰でも楽しめる。あちこちで評価が高いのも頷ける。
まあ、凄くて凄くて凄いです。他のシリーズも見てみたいと思うほどに。そして、アニメのせいで誤解されやすいのだが、『クレヨンしんちゃん』は元々大人向けに作った作品である、というのを再確認させてもらえる作品でした。漫画アクションなんて誰が読むんよ。おっさんだろ? そんなんで。


評価:S(A+かも、という気もしないでもない。でも、Sだ!)