機動戦艦ナデシコ劇場版』
久しぶりに見た。以前見たときは「死ね糞映画!」とか思ったものだけれども、存外に悪くない。中盤に入って以降の「本編を見てたファンが喜ぶ展開」とか、「格好良いキメ台詞」とか、うん、面白いし結構熱血する。
でもやっぱりあのラストはないよなあと思う。
一番盛り上がるべき決闘シーンが1分もかからず決着。しかも決着方法が「1対1で向かい合う二人。お互いのパンチが同時にヒット。どっちが勝ったんだ!? 敵『く、見事』 ぼかーん」では、やっぱりやってられないのだ。


そして伝説の「たかだが五感を剥奪されたぐらいで……」。いや、作中の台詞じゃなくて僕の感想なんだけどさ。
作中のとあるキャラは復讐者として憎しみを撒き散らしている。「お前らだけは許さん!」的台詞を連発。「本編ではあんなに明るい良い人だったのに彼に一体何が!?」で、観てるほうも結構燃える。
彼に一体何があったのか。

彼「あいつらに頭の中色々いじられて、五感が、特に味覚がね……」


僕「はあ。別にそのぐらいのことで怒らなくても」


現実的に考えたら、五感剥奪は結構酷い。でも、アニメーション作品において、悲劇はインフレしております。視聴者が怒る(つまり共感して怒れる)ことの最低単位は「人死に」。五感剥奪程度……、け。


「ヒロインの死>師匠の死>両親の死>仲間の死>主人公の死>>>(超えられない壁)>五感剥奪」


ヒロインの死以上に視聴者に衝撃を与える手段とすると「ヒロインのレイプ」というのが存在することはするのですが、よっぽど扱いを気をつけないと観た人がイヤな気持ちになるだけ、ということになってしまうのであまりオススメできません。
ナデシコ』において、「ヒロインレイプ」は無かったとは否定できない、程度の描写です。実験動物扱いされているのですから、そのぐらいあってもおかしくありませんが、基本的にオタクは楽観主義者になるよう教育されているのでその程度では悲観できません。数々のアニメヒーローが先生です。「前を向いて生きなきゃダメだ!」「はい!」
で、それを除くと「ヒロイン誘拐」と「五感剥奪」程度。まあ、「モルモット扱い」も含めていいかもしれません。


ヒロイン誘拐→まあ、最後には助けられるから大丈夫だよ
五感剥奪→いや、そりゃ困るかもしれないけどさ……
モルモット扱い→過去ばかり振り返ってちゃだめだ! いま僕らは生きてるじゃないか! それだけで幸せだよ……


ということであらゆる悲劇は悲劇として機能せず、全体の物語としてみると「終わり悪ければ全て悪し」でちょっとアレ。だから昔の僕は気にいらなかったのかなあ、と漠然と思いました。そんなに悪くなかった。しょぼん。


評価:B