所帯じみる

今から猛烈に所帯じみた話をするのでそういうのが苦手な人は読み飛ばしたほうが良い。なんでそんなことを言うのかというと、私もそういうのが苦手だからである。ならば、なぜ自分でも苦手な話をするのかというと(二文続けて同じ構成だ。我ながらまったく下手な文章である。しかしそんなことでは今日の私は止まらない)、その苦手を越えるぐらい私は衝撃を受けてしまったのだ。
そもそも所帯じみた話などというのは基本的に超ミクロな話であり、こうして一般に話して相手の役に立つ情報ではない。その上他人の内臓を見ているような、排泄物を見せられているような、まあ下品な話題だ。それを我慢して読み続けても結局は算数レベルのオチがついていることが多く、救いがない。
それでも、私は書く。私は下品かつ下らない話をしようとしているが、それを理解した上でも語りたいという衝動は止められないのだ。忘れていたが、これは私の日記帳だ。


さて、現在の私の時給は700円である。職務内容に適した金額で私は大変満足している。今日も職務中に本を読ませて頂いた。しかし、その給金では贅沢はできない、とみる向きがある。そのとおりだ。しかし、私は可能な限り働きたくない上に、辛い労働もしたくない。その線上に、貯金がしたいという欲望もある。貯金とは未来のマイナス労働(つまり、その分だけ私は「働かなくていい」)であり、労せずにそれができるのなら最高のものだ。
これが前提。そして本題である。
本日私は猛烈に餃子が食したくなり、近所のスーパーAに向かった。最近はどうも豚肉が高く、そして牛肉は常に高い。今日も最近の例によって牛豚合い挽き肉がグラム118円だ。グラム118円の肉を買うという選択は論外だ。私の買っても良い肉の価格はグラム98円からであり、20円も高い。400グラムは欲しいところであるから、結果80円オーバーだ。私は餃子を諦めようとした。
しかし、その時私は気付いたのである。もしや、他のスーパーならばもっと安く手に入るのではあるまいか。
私はすばやく買い物カゴを片付け、徒歩5分ほどのスーパーBに向かった。
やはり。牛豚合い挽き肉、グラム108円。そしてさらに2割引のシールが張られている! つまりグラム86.4円!
私は満足げに笑い、次にラー油に手を伸ばそうとした。そこで再び私に電流走る。スーパーBでのラー油の価格は168円。この価格帯の商品ならば105円ショップに並んでいる可能性がある!
スーパーAに赴いた最初から、計15分後。私は望みの商品を望みの価格で手に入れていた。


これが何の話かというと、今回私はとっさの機転で理論上189.4円得したことになる。
だからなんだ、と思うかもしれない(まあ、思うよね)。しかし、この買い物に私は15分しか時間をかけていない。つまり、時給換算すれば、時給757.6円。
映画館の時給より高いではないか。


私はしみじみと口笛を吹いた。うん、悪くない労働だ。