倉阪鬼一郎『死の影』・グレッグ・イーガン『万物理論』

倉阪鬼一郎『死の影』
正直、この話自体について話すことはあまりないのですが、倉阪先生という人について少し思い至ったのでお付き合い頂きたくたく。
僕が気付いたこと、というのはですね(えへん)、「倉阪先生はホラー版島本和彦なのではないか」ということなのです(えへん)。
つまり、島本先生は熱血劇画漫画が大好き。でも、今の──といっても随分昔のことだけれども──時流にはそれが合わない。ウケない。だからその手法をパロディに使う、という作家さんです。倉阪先生も同様の道筋をたどっているのではないか、と思ったのです。思ってなんなのか、といわれても困ります。思ったのよ。それだけなのよ。うふふ。


評価:D+


グレッグ・イーガン万物理論
ようやくイーガン──それも長編のイーガンの──の読み方、またイーガン内常識が理解できてきた。おかげか、感想を一言にまとめれば「最高だった」。いまなら『ディアスポラ』を面白く読み直せるかもしれない。どこだ、どこにあるんだ『ディアスポラ』!(部屋のどこかにはあると思うのだけれど)
最大の収穫は「汎性」ということばが理解できたということ。その後のイーガンワールドでは常識となっているのか説明がなかった「男でも女でもない汎性」ということ、そしてその人物に対する代名詞として「汎」が使われるということ。あまりにも初歩的でうんざりするが(イーガンファンの人に「ようやく理解できた」とか言ったら「嘘ぉ!」とか言われると思う)、基礎で躓くとダメージが大きい。「汎は〜」とかいうテキストが出るたびに「中国人? 汎さん?」とか思っていた昔の自分に申し訳ない。
万物理論』のテーマを雑に言いますと「無知カルトしね」。科学は正しいから科学なのよ〜趣味でそれを嫌うのはいいけれど理解をしてほしいのよ〜。つまり、血液型占いしね。『B型の彼氏』(あらすじ説明は省くが、ググって頂ければ僕の怒りは理解していただけると思う)しね。そしてその発展系であるところの──「京極夏彦しね」。「個々人の世界否定」の先に「真の個々人の世界」があるのだわあ。京極先生の世界も素敵だが、科学によるアプローチも諦めちゃいけない──という話。いや、其石が科学かと言われるとちょっと黙ってしまいますが。ジャネット・ウォルシュしね。


評価:A+